忍者ブログ
CATEGORY : []
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


2024/09/22/ [Sun]
CATEGORY : [text]
テキストの続きです。



「やあ、ジョミー」
「こんばんは。ソルジャー。今、大丈夫ですか?」
「何時だって構わないから、気軽においで」

そんな事を言うブルーだったが、ジョミーは既に結構気軽に青の間を訪れていた。寧ろ気軽過ぎるとエラなどは不満そうだ。
ジョミーとしては、初対面で散々悪態を突き倒し、文字通り死ぬほど迷惑を掛け、今更被る猫など持ち合わせては居ないといったところが正確なトコだ。寝顔を見ながら散々泣き倒してた自分はドコに行ったのだと我ながら図々しいとは思うものの、何時までも愚図愚図泣いてるよりは全然良いだろうと開き直っていた。

何より、今この船にジョミーに知り合いらしい知り合いなど数える程しか居ない。仲良くしてるとまだ言えるのは、リオと子供達ぐらいだ。長老達など既に天敵だ。後はフィシス。しかし彼女は女性でしかも年が離れてて気後れしてしまう。大人の女性を友人として選ぶにはジョミーの年では少し違和感があった。

そんな事を言ったら、ブルーなど年が離れてるとか何とか言う次元を超えた年長者だったが、いっそ常識外れのその年数に、逆にピンと来ないのだ。中途半端に50歳の方が年齢差を理解出来るといった感じである。しかもブルーは見た目だけ言えば、ジョミーより少し上のお兄さんぐらいだ。それにかなりの童顔だ。いっそ可愛い。最初頃は雰囲気に気圧され、成る程、アレが300歳と言うものか・・・寧ろ宇宙人。等と思ったものだったが、今となっては良く見れば見る程、無理だ、300歳に見えない。見た目に惑わされる自分の小市民的な感覚に呆れるが、仕方ないだろう。だっておかしいんだ。この人。
それにブルーは思ったよりは気さくな人だった。最初のあの能面の様な顔は何だったんだと拍子抜けしたものだ。寧ろぼうっとしてる様に見えるが、良く考えたらそれは単に何時も眠いからなのかもしれない。

ジョミーがそんな事を思っていると、ブルーは横たわっていたベットから身を起こそうとした。咄嗟にジョミーは手を差し出し、ブルーの背にクッションを差し込んだ。ブルーはお礼を言うとジョミーに向き合う。

「まあ、眠っていて相手出来ないかもしれないが・・・」
「そんな事はいいんです。ここに来ると落ち着くし」
「そうかい?」
「うん」

「まあ、お座りよ。お菓子もあるよ」
「貴方、いっつもお菓子勧めるけど、僕ってそんなに欠食児童に見える?」
椅子に腰掛けながらジョミーは、前から何となく思っていた事を聞いてみた。
「お腹空いてないのかい?要らない?」
「いや・・・要るけど・・・・・」
だってブルーの用意する(正確にはリオ)お菓子は、何時もとても美味しそうな物ばかりだ。夕食は済ませてあるけど、おやつは別腹って言うだろう。
それにしたってブルーは人の顔を見るなり何時もお菓子お菓子と・・・。そう言えばお年寄りなどは、年少者に何かと言うと物を食べさせようとする傾向がある事は、何となく知っていたが、まさかブルーのこれもそうなのか。
やはりこんな顔でも、300歳なのだ。そうだ惑わされるなジョミー・マーキス・シン。

そんな事を思いながら、ジョミーはリオが予め用意してくれてたお茶ととケーキをテーブルにセットする。ブルーは何時もお茶しか飲もうとしないけど、一人で食べるのも何なので、一口だけでもブルーに分ける事にしてる。その位なら良いだろう。食べられそうだったら、どんどん口に放り込む。以前、ドクターが食べられるなら何でも良いから口に入れて欲しいと言っていたからだ。
たまに困った顔してもごもご口を動かしてるけど、そんなブルーを見るのが楽しかった。

「君に用意してるんだけどな・・・」
今日もブルーは、もごもごしながらそう言った。
「勿論、食べるよ。美味しそうだもん。でも、僕ってそんなにひもじそうかなぁ・・・」

うん。とはブルーは言わなかった。
ブルーから見たら、何時も何時もここに来る度ジョミーはひもじそうだった。思念がダダ漏れなのだ。でもまだ思念の扱いに慣れてないジョミーにそんな事を言ってもどうしようも無いのでブルーは黙っていた。お腹が空いてるのなら食わせば良いのだ。何の問題も無い。
 

 

「それと今日は他にもあるよ」
次はどんな食べ物だ?と、口にケーキを放り込みながらジョミーは思ったが、ブルーは手元にコンソールを引き寄せ、モニターに何かを出した。
「うん?何?」
「君ぐらいの年の子なら好きかな?と思って。TVゲーム」

TVゲーム。
そんな物があるのならさっさと出せ。何となくこの船にはその手の娯楽的なものは無いのだと思っていた。ジョミーはシャングリラに来てから今まで、訓練と勉強に明け暮れていて、この船に住むミュウ達の生活の事にまで頭が回ってなかったが、そうだ、彼らだって人には違いないのだ。何かしらの遊びは必要だし、無い訳無いのだ。これは探せば色々出てくるのかもしれない。
そろそろ落ち着いた分余裕が出たのか、知らず鬱屈が溜まり出していたジョミーは、新たな可能性を見出し色めき立つ。ジョミーは普通の日常と言うものに飢えていた。

「これだよ」
そうブルーが言って、モニターに映し出した物は、緑のゲーム版だった。

「・・・・・・・・・・・・・・オセロ?」
「うん。そう」


--続く--

 

拍手

PR
2009/07/27/ [Mon]
こめんと [ 0 ]
<<機械 ~続き~ | HOME |機械>>
COMMENT
COMMENT WRITE















<<機械 ~続き~ | HOME |機械>>

忍者ブログ [PR]