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2024/09/22/ [Sun]
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テキストの続きです。
第四話。




2回戦目は36分27秒後に終了した。
また全てひっくり返された。ゲーム版はやっと半分程度埋まったと言う所か。

「なかなか粘ったね」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
何も言う事の無いのが不思議だ・・・。これ程コテンパンのクソミソに痛めつけられたプログラムの製作者だと言うのに。
何故だかジョミーはふと達観した気分になって空を見上げた。きつ過ぎる照明が眩しい。よくこんな下で眠れるもんだなブルー。眩しくないのかな?等と、関係の無い事をつらつら思う。
そして、ふいっとジョミーはブルーに顔を向けた。
「あの・・・ブルー」
「なんだい?」
「ご馳走様でした。今日はもう寝ます。おやすみなさい」
「そうかい?。おやすみジョミー。良い夢を」
「ハイ。ブルーも」
そして、ジョミーは青の間を退去した。



2日目。
次の日の夜。今日もまた全ての予定をクリアして青の間に向かうジョミーが居た。

「やあ、ジョミー」
今日のブルーも穏やかな優しい笑顔。ああ・・・和む。
「ブルー。こんばんは」
思わずジョミーはベットに駆け寄っていた。
ブルーはポンポンとベットを叩いた。ここに座れと言う事らしい。何時もは備え付けの椅子に腰掛けてるジョミーだが、ベットを勧められたのは初めてだ。いやまあ、以前、勢い余って自らダイブした事はあったけど、それは置いとく。

「え?!」
「ジョミー。おいで」
ボッと、ジョミーの顔が紅く染まる。どうしようと戸惑っていると、くいっと手を引かれた。勿論ジョミーは拒否する意志など微塵も無かったので、引かれた以上はとそのまま座る。近い。ブルーが近い。とっても近い。とゆーか、ほぼ0距離だ。
「あ・・・あの!。ブ・・・ブルー???」
「待ってたんだ。君を」
何事???!。どうしたんだろううううう!。ジョミーは声が引っくり返る。
「え・・・ええ、な・・・ななな何かあったんですか???」
どもりにどもってる。が、この際どうでもいい。
「じゃ、昨日の続き」
「は?」
ブルーは、そう言って昨日のオセロゲームを起動した。


この人・・・・相当、暇なんじゃ・・・・。ジョミーは緑色のボードを眺めながら、明後日の方向に吹っ飛びかけた気が一気に萎んで、ボンヤリ思う。
そりゃそーだ。だってずっと寝てばっかなんだもん。ダメだ、そんな事じゃ。動けないなら僕が動けば良いんだ。そうだ今度、広場や展望室に連れて行こう。ブルーにして見れば、散々見慣れた場所だろうが。仕方が無い。流石に船の外までは連れ出せない。しかも外ったって、今は宇宙だ。でも、だったら、僕がブルーに案内してもらおう。面白い場所やお気に入りの場所。昔の思い出、どのブロックをどんな風に作っていったのかとか。そうして色んな事を知れば、僕もこの船の事がもっと好きになるかもしれない。うん。そうだ。そーだよ!。

でもその前に、今は目の前の問題を片付けなければならない。何とはなしに鬱然とした気分でジョミーはボードを見詰める。
「じゃ、スタート」
ブルーは嬉々としてゲームを開始させた。
やるんだ・・・僕。


これで3戦目だ。
これはもう、このコンピューターに勝たない事には、この無限勝負から抜け出せないのかもしれない。とジョミーは目の前が真っ暗になる思いだ。例えオセロと言えど、ブルーの前で何度も何度も無様を晒すのは、何となく勘弁願いたいのだ。しかしジョミーの性格上、たった二回で根を上げ降参するなんて事も出来ない。
取りあえずコンピューターという名称は言い難いので、仮にこのブルーのオセロプログラムの事を、以下ダーク・ブルーと呼称する。因みに、20世紀に作られたチェス専用コンピューター、ディープ・ブルーから借用した。このディープ・ブルーは地球の青の事らしいので、合ってるだろう。

勝たねばならないのなら無い知恵絞ってでも対策を講じるしかない。取り合えず、今までの2戦を踏まえて検証してみる。
とにかくこのダーク・ブルーには、後々の事を考えて・・・等と言う発想自体が無いとしか思えない。戦術なんて言葉は華麗にスルー。緻密、且つ高速な計算の上、とにかく虱潰しに相手のコマを一個一個確実に潰していく。後の展開に備えて布石を残す等ど言ったやり方は一切通用しない。その布石ごと排除してくるのだから、残す事に意味は無い。と言うより残せないのだ。
こちら側から、段階を踏んだ作戦を展開する事は不可能だ。全て潰される。もしジョミーにコンピューター並みの計算力があって、何十手先も読み取る能力が備わっていれば対抗可能なのかもしれないが、残念なことに今のジョミーにそんな能力は無かった。仮にブルーの様に、脳をフル活性し、余す所無く全ての領域を使用可能に出来るのならば、可能なのかもしれない。だが、ジョミーには無理なのだ。

だとすれば、後はダーク・ブルーのやり方に合わせるしかない。
いわゆる対処法に近い気がするが、とにかくその場その場、ターン事に取れるコマを全て取り尽くしていく事に集中する。一つでも取り零してはならない。それは、二度と取れないコマを残さない、と言う事だ。相手の侵食を防ぎつつ、不利となりかねない場へ進入してでも経路の確保を優先する。
一つでも残せば、どんなに追い込もうとその一つを手掛かりに、ひっくり返しに掛かってくる。実際、2戦目では残り三つにまで迫ったのに、そこから全部返されたのだ。確実に殲滅する。それだけが、ダーク・ブルーに勝てる唯一の手段だ。と、ジョミーは判断した。

とにかく方向性は決まった。後は実践だ。
それからは、ダーク・ブルーとジョミーによる、血で血を洗う血みどろの殲滅戦が開始された。これは本当にオセロかとか思う。こんなやり方でやった事が無い。未知なる領域。先の展開の事など、既にどうでもいい事だ。どうせ最終場まではもたない。完全に捨てる。今、この時を生き延びなければ、我等に未来は無いのだ。ん?何かどこかで聞いた様なフレーズだな、と頭の隅で思いながらジョミーは必死だった。

そして相対してみて分かるのだが、このダーク・ブルー。当たり前だが実に合理的だ。無駄な事を一切しない。ジョミーはこれまで殆ど人間相手ばかりと、オセロをして来たのでとても新鮮だった。そもそも外で転げ回る様な遊びが好みだったのもあって、今まであまりやる機会も無かったのもある。ダーク・ブルーがコマを置く度、成る程・・・と、思わず感心してしまう。
そしてもう一つ、重々分かっていた事で、本当に当たり前だが、機械は疲れない。しかも早い。ジョミーがどんなにウンウン唸りながら必死に考えに考え抜いてやっとコマを置いても、ダーク・ブルーはさくっと次の手を打ち込んでくる。まるで自分だけが戦っている様だ。相手の顔が見えない。当然だ。ダーク・ブルーはプログラムだ。それでも、ちょっとは悩めよ!と機械相手に八つ当たりしたくなってくる。
当然のように認識していたつもりのそれを、今、改めて実感していた。


慎重に慎重を重ねて、じっくり時間を掛けて挑む事、53分07秒後。
またも、ゲーム半ばでジョミーの全てのコマは返されていた。ダーク・ブルーには最後まで試合をすると言う気は無いらしい。こんなのゲームじゃない。唯の潰し合いだ。
沈む夕日に背を向けて・・・等と言うフレーズが何故か頭に浮かんだが、それが一体何だったのかは思い出せない。とにかく負けたのだ・・・。

もう、絶対無理だ。そうジョミーは思った。


--続く--

 

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2009/07/30/ [Thu]
こめんと [ 0 ]
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